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【書評】『セイバーメトリクス入門 脱常識で野球を科学する』はセイバーの教科書だった話

こんにちは。

 

今回は、最近僕が読んだ本のレビュー記事です。

 

セイバーメトリクス入門 脱常識で野球を科学する』

 

 

元々プロ野球が大好きでセイバーメトリクスの存在は前から知っていた僕は、セイバーメトリクス業界で最大手の”DELTA”のスタッフが書いた本と聞いて即買いしていました。。。

 

 

結論から申し上げると、かなり良書と感じました。野球にそれなりに興味がある人ならめっっっっっっっっちゃ読み応えがあります!!!!!!!

今回は、そんなセイバーメトリクス本の内容・感想を語っていきたいと思います。

 

【注意】

・当記事では、解説においてある程度の本文の内容説明を行います。なるべくネタバレにならないよう配慮は致しますが、これから読む予定の方、購入済みの方にはネタバレとなってしまう可能性がございます。あらかじめご承知ください。

 

 

 

 

 

 

概要

「大切なのは、細かい数字を操作して理論を並べることではありません。客観的なデータとロジックという強力な道具を駆使して、野球の世界を新しい目線で見直して再発見することなのです」
アメリカ発祥の野球についての客観的な知見の探求=セイバーメトリクス(SABERMETRICS)。
その要点を的確にとらえた、これまでになかった“最初の一冊"。

(帯カバー部分より引用)

著者の蛭川晧平さん、監修の岡田友輔さんは、共にDELTAという日本最高のセイバーメトリクス研究会社のメンバー。日々セイバーメトリクスの研究と分析を進めている、まさに日本のセイバーメトリクスの第一人者たちです。

 

そんな彼らが書いたこの本は、帯表紙の『セイバーメトリクス、”最初の一冊”。』という看板に偽りなしの内容になっています。

 

・野球を見ること、分析することが好きな人

・野球を教える立場の人(指導者)

・統計・数学に興味があり、野球にも興味がある学生

には特におススメできる本と感じました。(もちろん他の野球ファンが読んでも楽しめるはずです)

 

内容

本書の内容は、本文の言葉を借りると3つに大別できます。

①まずセイバーメトリクスとは何か、その基本的な思考方法や分析の手法について説明します

②盗塁やバントは有効なのか、勝負強い打者は存在するのか、といった野球に関する一般的な原理や戦術についてセイバーメトリクスの議論を紹介します

③個別の選手の貢献度及び能力の評価について考えます

(『セイバーメトリクス入門 脱常識で野球を科学する』p7より引用)

つまり、セイバーメトリクスって何?」「セイバーメトリクスを使うことでどんな議論ができるの?」「選手をうまく評価できる方法って?そんなものがあるの?」ということを説明している本です。

 

 

セイバーメトリクスって何?

この本の中では、セイバーメトリクス「野球についての客観的な知見の探求」と定義づけてあります。そのための道具の例が『OPS』であり、『BABIP』であり、『ピタゴラス勝率』であるわけです。

 

この本の中で最も重要視されていることは、思考様式です。セイバーメトリクスは単なる数字遊びのツールではなく、どのように使うかを理解してこそ重要というわけです。

 

著書の中では、重要な思考様式を”セイバーメトリクス思考の三原則”として表しています。詳しい内容はここでは省略させていただきますが、要は「固定概念に縛られないで野球を見るためにセイバーメトリクスはあるんだよ!」ということが伝えられています。

 

 

②どんな議論ができるの?

作戦面においては、セイバーメトリクスの研究が進むにつれて、従来のセオリーに一石を投じる意見が見られるようになりました。例えば「バントは有効な戦術か?」といった議論は、昨今の野球界でよく見られる議論の中の1つです。

 

著書の中では、このように戦術面で「従来は定石と言われていたり、得点を挙げるのに有効と思われていたが、実はそうではない」事例がいくつか出てきます。また、その事例を説明するために、統計を駆使したデータをふんだんに使用しています。そのため、「なぜ有効とはいえないか」がとても分かりやすく解説されています。

 

 

③『選手をうまく評価できる方法』とは?

従来は、走攻守のタイプが異なる選手を一律に評価する基準はあまり存在しませんでした。そのため、例えば「3割30本打つけど守備走塁は微妙な選手」と、「.280 10本だけど守備走塁が抜群の選手」はどっちが優れた選手かという議論になると、平行線をたどることになります。

 

そこでセイバーメトリクスの出番ということになります。セイバーメトリクスの考え方としては以下の点があります。

『つまるところ試合の目的は勝利であって、選手の価値なり貢献度というのはチームの勝利をどれだけ増やしたかで評価されます』

『そしてそれは打撃による貢献もあれば走塁による貢献もあれば守備による貢献もあり、全てを総合して捉える必要があります』

(『セイバーメトリクス入門 脱常識で野球を科学する』p108より引用)

要するに、チームの勝利数を増やせる選手が優秀な選手となるわけです。その分析方法をどう行うかについて、著書の中で深く述べられています。

 

 

 

感想

セイバーメトリクスをきちんと基礎から学びなおせた。とても勉強になった

「とにかく勉強になった。セイバーメトリクスを”理解”する一助になった。」

この本の良さはこの言葉に集約されると思います。

セイバーメトリクスの各指標の説明だけでなく、「なぜこの指標が必要なのか」「どうしてこれを用いることが重要なのか」といった面まで論理的かつ実証的に話を進めてくれて、頭の奥底までセイバーメトリクスの根を張ってくれるような構成でした。

 

また、セイバーメトリクスの歴史や発展についても述べられています。この1冊で、「セイバーメトリクスってなんだろう?」と思っている人が理解するための入門書としては完璧すぎるくらいの内容がありました。

 

 

②セイバー的思考回路は、他の分野にも応用できそう

セイバーメトリクスの本質は、『客観的な知見の探求』です。つまり、主観にとらわれず、物事を柔軟かつゼロベースで考えていくことがセイバーメトリクスの考え方として重要とされています。

このことは、野球だけにとどまらず、他の分野でも使える考え方だと感じました。つまり、今までの慣習や習慣があったとしても、理由をしっかり考察し、本当にその習慣は必要なものなのかを検証する姿勢です。このことは、野球以外でも問題解決の方法として非常に優れている方法だと感じました。

 

 

③野球をプレイしている人にとっては、「野球の本質」「理想の選手」を逆算して練習できそう

著書の中で、「どのようなプレーは得点の価値を高めるか」「どのような結果を出すと勝利に貢献する確率が高いか」ということが述べられています。また、野球をやっているとつい忘れがちな、「野球は何を目的にするゲームか」という点も再定義を行っています。

これは、野球を実際にプレイする側の人から見ると、勝利に貢献するために行うべきプレーがはっきりすることも意味します。セイバーで得点確率を上昇させられるプレイや、失点確率を減少させるプレイがわかれば、そのようなプレイができる選手になるための練習や能力開発が行えます。勝利に貢献しやすくなるプレイスタイルの習得ですね。

こういった観点から、野球を実際にやっている人も読んで損はない内容だと思います。

 

 

④歯ごたえがあり統計・数学的思考にも触れられる。反面、意外と敷居は高かった。

この著書は、セイバーメトリクスという「分析手法」を取り扱う関係上、数式や統計学用語が結構な頻度で出てきます。*1 これらは、野球が好きな人に対して統計学や数学的思考に触れる入門としての立ち位置も果たしてくれる一方、数学が苦手な人にとってはちょっと読むのがしんどくなるかもな……という気もしました。

 

良くも悪くも、『大学の””セイバーメトリクス学 入門””講義の使用テキスト』の感覚で読んだほうがいいです。

 

 

⑤高校の図書室に置いてあったら面白そう

正直、高校生にとっては、この本で扱う数学的な考え方や統計学の知識は高校で習う範囲を多少超えているように感じます。しかし裏を返すと、野球という題材を基にして、楽しみながら大学入門レベル(のはず)の数学・統計的思考を身に付けられる本とも言えます。

 

そのため、高校の図書室にこの本が置いてあったら非常に興味深い影響が出そうです。昨今のドラフト候補の高校生には、普段から読書の習慣がある選手も見かけるようになりました。そんな高校球児が、多少苦労するかもしれないがこの本を読破して理解できれば、野球観と論理的思考を同時に磨けるんじゃないかと感じます。

 

そうでなくても、数学的分析が好きで、かつ野球好きな高校生はたくさんいるはずです。そんな人たちが読んでくれたら、今後のセイバーメトリクス業界もさらに面白くなるんじゃないかな?と思います。

 

 

以上になります。

 

 

セイバーメトリクスに興味がある、聞いたことある人にとっては間違いなく買いの一冊です!!!僕は胸を張ってそう言える、そんな一冊です。

 

 

ご覧いただきありがとうございました!

 

*1:期待値・加重・差分・損益分岐点・相関関数など